始業式

3学期始業式

3学期始業式  校長の話   「人間万事塞翁が馬」      R8.1.7

皆さん、あけましておめでとうございます。令和8年のスタートです。

さて、今年は「午年(うまどし)」です。馬にちなんだ有名な故事成語として、「人間万事塞翁が馬(じんかん・にんげんばんじさいおうがうま)があります。知っている人も多いでしょう。略して「塞翁が馬」と言います。どんな話かというと…

 

昔、中国の「塞(とりで)」に住んでいた「翁(おじいさん)」の馬が逃げ出してしまいました。周りが「不幸だ」と言うと、翁は「これが幸運になるかもしれない」と言いました。すると後日、その馬が素晴らしい駿馬を連れて帰ってきたのです。人々が「おめでとう」と言うと、今度は「これが災いになるかもしれない」と言いました。その後、息子がその馬から落ちて足を折ってしまいました。しかし、その怪我のおかげで戦争に行かずに済み、命が助かった……というお話です。 

この話が伝えているのは、「人生で起きる出来事の良し悪しは、すぐには判断できない」ということです。

 

3学期を過ごす中で、進路決定や卒業式、学年のまとめや進級に向けていろいろな状況が起こるでしょう。

  • 「第一志望の高校に合格しそうにない」
  • 「部活動の試合で思うような結果が出なかった」
  • 「友達との関係がうまくいっていない」

そんな時、「もうダメだ」と決めつけて落ち込みすぎる必要はありません。その失敗が、後の大きな成長や、別の幸せにつながる種になるかもしれないからです。逆に、調子が良い時こそ、謙虚さを忘れずに努力を続けることが大切です。

 

『塞翁が馬』を地で行くのが、iPS細胞の発見でノーベル賞を受賞した「山中伸弥 博士」です。山中博士はもともと整形外科医を目指していました。しかし、手術が苦手で、研修医の時に他の人なら20分で終わる手術に2時間もかかってしまいます。 

それは、当時の博士にとって大きな挫折、不幸だったかもしれません。博士は、手術が苦手だと自覚し、自分を生かせる医学研究の道へ進みました。その結果、世界を救うiPS細胞の発見につながりました。天才外科医でも直せない患者を、山中博士のiPS細胞が治療する道を拓いたのです。もし、博士が器用に手術をこなせていたら、ノーベル賞の大発見は無かったかもしれません。博士は、「塞翁が馬」を座右の銘としています。

 

おそらく人生経験豊富な先生方なら、思い当たることがあるでしよう。

 私の経験の一つを話します。私の中学校は荒れていて、野球部の先輩達に我々後輩はいじめやしごきを受けました。私はバッティングピッチャーをやらされ、毎日2300球投げ続けました。何球かボール球が続くと、先輩は「ストライク投げろよ!」と怒鳴ります。打てないと「打ちやすい球投げろよ!」とキレます。毎日大きなストレスの中で、辛い部活動でした。しかし、高校に進学した野球部でピッチャーをやったら、思ったところに投げられるコントロールが身についていました。辛いバッティングピッチャー経験から、技術の向上を獲得したのかもしれません。これも「塞翁が馬」でしょうか。おまけの話になりますが、その中学校当時、我々は後輩いじめ等、理不尽なことに声を上げ反乱を起こしました。この経験が、やられて嫌だったことは後輩にはしない、嫌なことには意見を言う等、自分の生き方や人格を形成する基になりました。これも「塞翁が馬」かもしれません。

 ただし、勘違いしてほしくないのは、「人生で起きる出来事の良し悪しは、すぐには判断できない」とは言え、「何も努力もしなくても帳尻が合う」ということではありません。

 

さて、今日から始まる3学期。良い時も、そうでない時も、サラブレッド馬のように颯爽と走らなくても、一歩一歩、時には戻りつつ少しずつ前へ進んでいきましょう。この3学期が、皆さんにとって「次なる飛躍」のための大切な準備期間になることを期待しています。 終わります。